pi_circular Tanker Operational riskInsurance & claims Britannia P&I
BRITANNIA LOSS PREVENTION 第12号 // 2024年8月 タンカーのコーティングに関する 基 本ガイド タンカーはさまざまな石油精製品や化成品を輸送できるよう 設 計されています。しかし、幅広い貨物に対応できるよう、 船内のカーゴタンクには特別なコーティングが必要です。 効果の高い確実なコーティングを施すことで、水や腐食性物質がタンクの 金属表面に直接触れるのを防げるため、タンクが損傷しにくくなり、輸送中の 貨物のコンタミを防止できます。ついては、タンクコーティングの意義と、 タンクコーティングがクレームやリスク管理に及ぼす影響を理解しておくことが 欠かせません。 Van Ameyde Marine 本号のパートナー Van Ameyde Marineは、70人以上の 海事サーベヤーと海事コンサルタントを 擁する、海運業界向けの独立系サービス プロバイダー大手です。 本号では、タンクコーティングの 主な種類と、それぞれの基本的な 特性とデメリットについて簡単に 解説します。 コーティングの種類 カーゴタンクのコーティングには さまざまな種類があります。 それぞれ特性やメリットが異なり、 幅広い貨物に対応します。 ステンレス鋼 ステンレス鋼は厳密にはコーティングではありませんが、大半の ケミカルタンカーのタンクはステンレス鋼でライニングされていること が多いです。ステンレス鋼は合金の一種で、タンカーではSUS 316 や二相ステンレス鋼などの鋼種がよく用いられています。 カーゴタンク間の隔壁の表面が無垢のステンレス鋼製の場合、 カーゴタンクとバラストタンクや空所間の隔壁の表面をクラッドする 場合は、SUS 316Lや316LNを用いるケースがほとんどです。 「クラッド」とは、船舶の船体鋼材に厚さ3ミリのステンレス鋼を接合 した状態のことをいいます。 ステンレス鋼の主な特性の1つは、酸化クロム皮膜がある点です。 これを「不動態皮膜」とも呼びます。厚さ約3ナノメートルというこの 極薄の皮膜が、タンクに積まれる貨物からステンレス鋼を保護する 隔壁となります。不動態皮膜は特定の貨物に触れると徐々に劣化 しますが、ステンレス鋼は酸素に触れるとこれを再生させるという 性質があります。このような皮膜の保全性のことを、一般的に「不動 態」と呼びます。ステンレス鋼の酸化クロム皮膜の完全再生を促す には、クリーニング後、タンクを24~72時間空気にさらすとよいで しょう。ただ、スケジュールに余裕がなく、揚げ荷役、クリーニング、 積み荷役が続けて行われる場合は難しいかもしれません。 酸性物など皮膜を劣化させやすい貨物を繰り返し輸送したあとは、 酸化クロム皮膜が再生しきらないこともあります。ステンレス鋼から 生じる遊離鉄分子で主に構成される汚染物質があることが原因で す。防食皮膜の再生を促すには、「不動態化」と呼ばれる処理を 行います。 作業の手順としては、まずタンククリーニング装置を用いて硝酸溶 液やクエン酸溶液をタンク内に環流させます。酸によって、不純物 である遊離鉄を効率的に除去できます。除去したら、タンクを入念 に清浄し、約72時間空気(酸素)にさらします。空気にさらすことで、 ステンレス鋼に含まれるクロムが酸素と反応し、不動態皮膜で完全 に覆われます。不動態化の作業は船員が実施しても構いません が、十分に注意して実施してください。 また、不動態化と比べると実施できる範囲は小さくなりますが、 「酸洗い」という処理方法もあります。酸処理により、表面に付着し ている鉄、不純物、酸化物の除去や焼け取りを目的としたもので す。通常は外部の専門業者が行います。 タンカーのコーティング // BRITANNIA INSIGHT2 ステンレス鋼コーティング ステンレス鋼は他の鋼と比べると防食性に優れていますが、腐食 を完全に防げるわけではありません。腐食の中でも特によく見ら れるのが点食です。ステンレス鋼と特定の元素が化学反応を起こ し(例:貨物の残渣と塩化物が結合する)、小孔が生じる現象で す。放置していると広がっていき、やがて深さ数ミリ、幅数センチ の大きな割れ目になります。 小孔が生じると、表面がいびつになりクリーニングがしにくくなりま す。貨物の残渣を除去しきれずクロスコンタミが発生するほか、 不動態皮膜の再生能力も低下してしまいます。クラッド鋼の表面 にできた小孔や割れ目は厚さ3ミリ のステンレス鋼層を貫通し、 その下にある軟鋼が貨物に直接当たるようになります。ひどい 場合には、軟鋼に穴が開き、隣のバラストタンクや空所に貨物が 漏洩してしまうこともあります。 ベストプラクティス クリーニングが終了するごとに、タンクの清浄度だけでなく、表面 の状態について目視確認を行うなど、入念な点検を実施するよう にしてください。輸送する貨物によっては、ステンレス鋼の不動態 性を定期的に測定する必要があります。 点検の際は、ステンレス鋼のヒーティングコイルの状態に特に 注意を払ってください。多くの場合、点食は一度発生すると小孔が 次第に増えていきます。小孔ができると、水(時にグリコールとの 混合物)やサーマルオイルなどの熱媒体によって貨物のコンタミ が起きるおそれもあります。ヒーティングコイルの保全性を確保す るには、通常の目視点検を行ったのち、使用前に圧力試験を行う よう管理体制を構築する必要があります。 また、酸性貨物は、ステンレス鋼との化学反応により被膜を劣化 させやすい混合物を生成し、腐食を引き起こす可能性があるた め、輸送前から輸送中、輸送後まで十分に注意してください。 腐食の程度によっては、修理に必要な人手や材料、作業日数が 大幅に増えてしまうおそれがあります。 ピュアエポキシ 有機コーティング タンカーのコーティング // BRITANNIA INSIGHT3 コーティングの膨れ(破裂前)コーティングの膨れ(破裂後) 完全にコーティングした状態 ピュアエポキシは主にクリーンプロダクト(CPP)を輸送する船舶 に用いられます。防食性が低いため、積める貨物の種類がある 程度限られます。 貨物輸送後のメンテナンスが不十分であったり、クリーニングが ずさんであったりすると、粒子状物質が堆積する、あるいは貨物 の残渣や洗浄水の残液が付着したままとなり、次に積む貨物で コンタミが起きるおそれがあります。 エポキシコーティングは、クリーニング方法が不適切であったり 高温状態にさらしたりすると、劣化が早く進み、貨物のコンタミ 原因になることがあります。 ピュアエポキシでコーティングしたタンクはパーム脂肪酸蒸留物 などの植物酸油と相性が悪く、これらの貨物を積むと、 有機コーティングに含まれる結合剤が化学反応で劣化します。 事前に貨物の耐性表を必ず確認するようにしてください。 ベストプラクティス 商売の性質上、タンクは、前荷を揚げて次の貨物を積むまでに 最低限のクリーニングしか行えない場合や、せいぜい清水で底を 洗い流すしかできない場合も多々あります。広範囲のクリーニング が必要であれば、使用する清浄剤や、洗浄水の温度に特に注意 を払わなければなりません。一部の清浄剤は前荷の残渣の除去 に非常に効力を発揮する一方、エポキシコーティングを劣化させる おそれもあります。 定期点検を行い、コーティングの状態を定期的に確認してくださ い。コーティングは一部が破損するとそこから急速に破損が広がっ てしまうため、速やかに対処する必要があります。放置していると、 粒子状物質(コーティングの剥離片や錆片)の混入だけでなく、 貨物や水分も混入する事態になりかねません。 コーティングが柔らかくなっている場合は、固まるまで時間をおく 必要があります。加熱は避けてください。塗膜の表面だけが先に 固まり、内部が柔らかいままになってしまいます。 貨物の適合性、熱への暴露、清浄剤については、メーカーの ガイドラインに従ってください。 フェノールエポキシ 有機コーティング 完全にコーティングした状態 フェノールエポキシコーティングは、フェノール系樹脂とエポキシ系 樹脂の両方の特性を組み合わせたもので、より幅広い化成品への 防食性を備えています。その優れた特性により対応できる貨物も 多いことから、広く使われています。た
Essential Guide to Tanker Ship Coatings - Types, Maintenance, and Best Practices - Japanese
Britannia P&I
Read full article at Britannia P&I →
Opens Britannia P&I in a new tab