pi_circular Dry bulk Cargo riskSafety & casualty Britannia P&I
Page 1 of 5 2011年1月 メンバー各位 インドネシアとフィリピン - ニッケル鉱貨物の安全輸送 (Indonesia and the Philippines – Safe Carriage of Nickel Ore Cargoes) はじめに お聞き及びかも知れぬが、2010年の10月と11月には、中国向けのニッケル鉱をインドネシアから輸送中の船舶三隻 (Jian Fu Star号、Nasco Diamond号およびHong Wei号)が転覆・沈没し、船員44名の命が失われた。これらの事故 の原因が完全に究明されたわけではないが、ニッケル鉱は、微粉鉄鉱石や多くの精鉱類と同様、船積みの際の水 分値が「運送許容水分値」(TML)を上回っていれば液状化しかねない貨物だ。このような貨物の液状化は本船の不 安定化につながりかねず、その結果、本船を転覆せしめる可能性がある。したがって、上記三隻の沈没が貨物の液 状化によるものである可能性はきわめて高い。 その他にも、インドネシアとフィリピンの両方で船積みされたニッケル鉱の貨物が液状化して本船の安定性を損なっ たものの、幸いにも本船の喪失には至らずに済んだ最近の事例がいくつかある。その中の一件には、本船が座礁し てかなりの船体損傷を受けたものがある。今のところニッケル鉱の積み地はフィリピンの次の4ヵ所のみだ。すなわ ちサンタ・クルス(ルソン島)、スリガオとトゥバイ(ミンダナオ島)、およびリオ・トゥバ(パラワン島)の4ヵ所だ。 一部の鉱石貨物の液状化は、外洋での船体の動きや、主機その他の船内の機械類の作動による振動により、航海 中に起こる可能性がある。 国際グループは、2010年11月24日から12月3日まで開かれた第88回IMO「海上安全委員会」(MSC)において、イン ドネシアとフィリピンの代表団に対し、インドネシアおよびフィリピンから出荷されるニッケル鉱の船積みと運送に関す る懸念を非公式に表明した。同委員会には国際乾貨船主協会(Intercargo)が参加し、ニッケル鉱など、液状化し得る 貨物の運送にかかわる危険要素やリスクについての懸念を表明している。さらにIntercargoの指摘によれば、一部 の用船者や船長は、荷送人からの申告書や報告を独自に検証する機会を与えられぬままに、その申告書と試験報 告を容認するようにとの極めて大きな圧力を受けていた。マーシャル諸島共和国はIntercargoの介入を支持し、イン ド代表団は、インドで船積みする微粉鉄鉱石の輸送安全向上のためにインド当局が講じている措置について概説し た。 ニッケル鉱の船積みと運送にかかわる具体的懸念 インドネシアとフィリピンからのニッケル鉱貨物の船積みと輸送については、以下に述べる具体的懸念が生じている。 (a) 鉱山の多くは人里離れたところにあり、荷役・港湾設備はまったくないか非常に限られたもので、荷役の装備や 方法も幼稚なものだ。貨物は浜辺に野ざらしで山積みされ、結果としてその時の天候に左右されることになる。 The Britannia Steam ship Insurance Association Limited Page 2 of 5 (b) 伝統的には、ニッケル鉱貨物の船積みは、過去数年にわたり降雨がごくわずかな2月から5月・6月にかけての 乾季に行われてきた。しかしここ数年では雨季と乾季の明確な区別が大きく崩れ、今や乾季においても激しい降雨 が見られるようになった。したがって貨物の堆積山は、予想可能であった過去数年の気象パターンにより(降雨か ら)保護されることはなくなった。 (c) 鉱山は遠隔地にあることから容易に行くことはできず、したがって本船側の選任する独立したサーベヤー・専門 家が鉱山に赴いて船積み予定の貨物の試料採取を行うのは困難がともなう。 (d) インドネシアとフィリピンには、独立した試験所はたとえあってもごくわずかだ。鉱山には一般に独自の試験所 があるが、そこに適切な試験設備が十分な状態であるかどうか、あるいはそこが「国際海上固体ばら積み貨物規 程」(IMSBCコード)に定められた手順に従って貨物試料の検査を行っているかどうかを判断するのはしばしば不可 能だ。鉱山の設備および試験・試料採取の手順について可能な限り行われた複数の監査からすれば、そのような 判断は不可能であることがわかる。したがって、特に注意すべき「運送許容水分値」(TML)の証明書や「流動水分 値」(FMP)など、IMSBCコード(2011年1月1日より国際的に強制化された)のもとで荷送人に提供が求められる情報 や証拠書類の信頼性には問題がある。 (e) ニッケル鉱の組成や物理的性質は産地によって大きく異なる。この貨物が同質でないことから、貨物全体の TMLや含水率を正確に測定するのは困難だ。荷送人は、しばしばいくつかの異なる産地から持ち込まれる同質でな い貨物に対し、唯一のTML証明書を提供することがあるが、これはコードに違反している。 (f) ニッケル紅土(Nickel Laterite)は粘土含有量が高い。そのため通常のフロー・テーブル試験法によるFMPの試 料測定は主観的なものになりかねず、その測定値には問題がある。フロー・テーブル試験法が適切でない場合は、 「コード」(付録2)第1.1.1項は、「寄港国」(Port State)の主管庁が認めた手順に従うべきことを定めている。 (g) 各船は停泊中、たいていの場合、浜辺に積み上げられた堆積山から積み込んだはしけや揚陸艇の貨物を船 積みすることになる。その貨物は、おそらく鉱山から浜辺までの輸送中、および浜辺に山積みされている間、試料の 採取と試験が終わった後で雨水で濡れていることもあろう。「コード」は水分値の測定と船積みの間隔は7日を越えて はならないと定めているものの、多くの場合、この期間は守られていない。 (h) 貨物試料を採取して独自の測定を行うべく船側が選任したサーベヤーからは、鉱山側の実施した試験の結果 を認めさせようと、かなりの圧力を受けたという報告がいくつかある。場合によっては、この「圧力」はまったくの身体 的脅迫にほかならぬものであった。 国際海上固体ばら積み貨物規程(IMSBCコード) IMSBCコードは、1974年SOLASとその議定書のもとで公布される。IMSBCコードは、ニッケル鉱など、液状化し得る 貨物を含む固体ばら積み貨物の安全な積み付けと船積みに関する、国際的合意に基づく規定を定めている。同 コードに特に記載されていない貨物については(第1節)第1.3項の規定に従う。コードは2011年1月1日より強制と なった。 1974年SOLAS第VI章第2規則は、荷送人に対し、貨物の適切な積み付けおよび安全な運送のために必要となり得 る予防手段を船積みに十分先立って実施することができるよう、貨物に関する適切な情報をすべて船長またはその 代理人に提供すべきことを求めている。 IMSBCコード第4節では、貨物情報の提供に関する荷送人の義務と責任を定めている。 液状化するおそれのある貨物(種別Aの貨物)に関して最も重要なことは、その船積みの際の水分値、および「運送 許容水分値」(TML)を示す証明書を提供すべきことだ。このTMLは、IMSBCコードの中で「流動水分値」(FMP)の Page 3 of 5 90%と定められている。FMPは、試験所での貨物試料の分析によってのみそれを決定し得る。このTMLを越える水 分値を持つ貨物は(そのために特別に建造されたか、そのための装備を備えた船舶以外は)船積みを認めてはなら ない。ニッケル鉱は、貨物別表(個別スケジュール)には入っていないが、種別Aの貨物と見なして然るべきだ。 (A) 船長の責務 船長またはその代理人は、船積み作業の開始時から終了時に至るまでこれをモニターしなければならない。船積み は、船長またはその代理人が上述のような必要貨物情報をすべて文書で受け取るまでそれを開始すべきではない。 船長はSOLASのもと、貨物の状態につき、それが本船の安全に影響を及ぼす懸念があれば、その貨物を船積みせ ぬこと、または船積みを中止することを命ずる決定権を有する。 (B)荷送人の責務 (1) 貨物情報 荷送人は、貨物の安全な船積みと運送および
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